震災や冷害を乗り越えた日本初の自治体経営によるワイナリー。十勝ワイン城の歴史と取り組み

Photo by 池田町住情報ステーション

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日本のワイナリーを巡り、日本のワインをストーリーとともに愉しむことで、よりラグジュアリーな時間を味わい深く堪能することができることでしょう。

今回は北海道は池田町(いけだちょう)からの紹介です。

道央、道南への大動脈である道東自動車道の池田ICがあるため、とかち帯広空港から車で50分、十勝の中心都市、帯広から車で約30分の町である。

北海道の行政区画の1つとして、道庁の出先機関として道内各地に置かれている総合振興局の1つ十勝総合新興局(旧:十勝支庁)管内の東部、平坦な土地が多く、南西の幕別町との境界を十勝川が流れ、利別川が町域中央を南北に貫流する中川郡にて、ブドウ栽培・ワイン醸造を行う「ワインの町」である。

十勝の冬は-20度を下回るものの、雪が少ないことから乾燥した日々が続き、夏は30度を超える。

1年の寒暖差が50度以上になり降雨量、降雪量がすくないため、通常の栽培方法ではブドウ樹は枯死してしまうような、ブドウを栽培するには適していない土地に、十勝ワインが産まれ、今では「ワインの町」として親しまれているのは、北海道のワイナリーとしては外せない、池田町ブドウ・ブドウ酒研究所があるからなのである。

日本初の自治体経営によるワイン醸造

十勝沖地震と冷害に見舞われた町

1952年3月4日午前10時、襟裳岬東方沖約50km、十勝沖を震源とするマグニチュード8.2の地震が発生。揺れや津波などの被害により、死者28人、行方不明5人、287人が重軽傷、家屋は全壊825棟、半壊1324棟、一部損壊6395棟、流失91棟、浸水328棟、消失20棟、非住家被害1621棟、さらに船舶被害は451隻という甚大な被害を被る。

3月という時期の影響もあって、流氷および海氷が津波により押し寄せたことも被害の拡大を招いた。更に追い打ちをかけるように1953年、1954年と2年連続で冷害による被害も重なり、元来農業の町であった池田町にとって、安定した産業基盤の確立が、復興への急務となった。

地域住民と自治体が主体となった復興計画

池田町の理髪店に産まれ、1957年に37歳で北海道で唯一の社会党町長として話題を集め池田町町長に当選した丸谷金保(まるたにかねやす)氏が1960年、池田町復興のため寒地農業の確立を目指すべく発表した骨子「新農村建設事業計画」は、生産・加工から販売まですべて地域住民と自治体が主体となって手がけ、外部資本の介入を許さない姿勢を貫く池田町農業の指針となり、今日では一村一品運動の元祖として、十勝ワインの開発への町をあげての取り組みの軸として引き継がれている。

1961年から農業にブドウ栽培を取り入れ、翌1962年には町内の山葡萄の調査・研究に着手すべく池田町農産物加工研究所を設立し、1963年には、自治体初の種類試験製造免許を取得するに至った。

同1963年には旧ソ連ハバロフスク極東農業研究所にて、池田町に自生する山葡萄が良質のワインになるアムレンシス亜系と断定され、ワイン造りに拍車がかかり、翌1964年にブドウ栽培の研究開発、ワイン製造を手がける「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」が設立された。

やっとの思いで設立された「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」であったが、設立年に池田町を襲った大冷害によって一部を残してほどんどの葡萄苗木が枯れてしまうという悲劇が襲う。さらに、甘く加工したワインが出回っていた当時の日本市場の評価において、本格的な辛口ワインを生産していた十勝ワインは1960年代まで

「こんな酸っぱい酒が飲めるか」
「税金で、まずい酒作ってどうする」

等と非難されていたという。

こういった逆境にも挫けることなく、冷涼な北国で作られる酸味の強いブドウをストレートに表現し、フルーティで爽やかな味わいの白ワイン、長期熟成に耐えうる赤ワインをといった辛口路線を堅持し、寒さに強い苗木と野生の葡萄の交配、新たなブドウ品種開発の為に10万粒以上、約2万1,000種の交配を続け、期限付き酒類製造免許で販売していたワインも、1971年には永久免許を取得し、「十勝ワイン」のブランド名で、「清見(きよみ)」「清舞(きよまい)」「山幸(やまさち)」など40酒類の新品種ワインに加え、約20種類のブランデー、リキュールなども送り出すに至った。

ワイン城は前だけお城 #十勝ワイン

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池田町ブドウ・ブドウ酒研究所、そして十勝ワインを支える生産者たち

池田町ブドウ・ブドウ酒研究所は、生産組合とともに2003年、農薬取締法の改正により農薬使用基準が厳格に定められたことにより、原料の安全性に対し、栽培履歴記入を義務付けるなど意欲的に取り組み、事業要件に該当する全ての生産者がエコファーマーを取得し、先進的営農活動支援に繋げた。

このことから、以前から取り組んでいた有機物の施用に加えて、堆肥及び農薬使用基準についても生産組合での目安に近く、認定条件は難なくクリアできたという。

そんな池田町ブドウ・ブドウ酒研究所を支えるワイナリーを紹介しよう。

町内圃場(ほじょう)

ブドウ栽培に適した池田町のテロワールは、

  1. 火山灰土で通水性が良いこと
  2. 砂礫を多く含み、土壌の保湿が良いこと
  3. 腐植土が高いこと

が挙げられる。

池田町内圃場では、町内に分布する様々な土壌での試験栽培や町民への見本園として、町内に述べ12箇所、約50haの試験圃場を設置してきた。乳飲沢は黒色火山灰土の広大丘陵地であり、南西に広がる斜面により日照量も多いため、1975年から造成開始、1976年から清見種などの栽培を始めたものの、千代田地区圃場の面積拡大、管理上の問題により現在は山葡萄の自生繁殖地となっている。

清道区のテロワールは、乳飲沢と同等の黒色火山灰土で親水性も高く、腐食に富み、一般畑作はもちろん培土を必要とするワイン用ブドウ品種にとって精耕栽培に適した。

千代田地区は沖積土の中粗粒褐色低地土で、多くの小石を含んでいることから水はけが良好かつ、十勝川に隣接した南向き斜面による良好な日当たりにより、黒色火山灰土の平地よりも地温が上がるため、ブドウの萌芽も早く、育成も早いというテロワールであった。

これらの特性から、現在では清見、千代田の2地区35haの直営圃場が十勝ワインにまかなう町営圃場となっている。

仁木町

古くからりんごや生食用ブドウが栽培されてきた道内有数の果樹産地である仁木町。1970年から池田町ワイン醸造量が増加したため、稲作転換によりブドウ栽培を増やし、仁木町農協との間でブドウの加工契約の締結をきっかけに、生食用ブドウのワイン原料としての購入が開始された。

1981年に「仁木町ワイン専用種ブドウ生産組合」が発足し、十勝と異なるテロワールのため「ツヴァイゲル・トレーべ」「ミュラートゥルガウ」「モリオ・マスカット」「ザラ・ジュンジェ」の4品種の契約栽培が始まり、新品種も加わって今日に至っている。

余市町

仁木町と隣接する余市町は道内一の果樹産地である。年間平均気温が果樹栽培に適した約8℃という気象条件下にあり、2002年から余市町農業協同組合と栽培契約を始め、3戸の農家で「ツヴァイゲル・トレーベ」「ミュラー・トゥルガウ」「バッカス」「ケルナー」などの従来品種に加え、「ピノ・ノワール」「メルロー」「シャルドネ」といったメジャー品種も栽培。


余市町のテロワールは全般的に日当たりがよく緩い傾斜地であるため、日照時間が多く、ワイン専用種にとって好条件なため、ワイナリーとの契約栽培農家が多い地域である。

剣淵町

中央部を天塩川の支流、剣淵川が流れ、その流域には平地が拡がり、東西両側を丘陵地帯に挟まれる名寄盆地に属する剣淵町は、畑作・稲作が中心である。内陸性気候で夏は高温多湿、冬は雪が多いためブドウ栽培に好条件ではないかという可能性から、1999年にブドウの生育状況調査のため、「剣淵町ブドウ研究会」に委託し、清見種の試験栽培が開始された。


2003年より契約栽培に移行し、当初2戸の農家でスタートしたブドウ栽培だったが、現在は士別市の農家も加わって5戸の農家で清美種が栽培されている。

ワイン造りはブドウづくりから

北海道ではもっとも古い自治体ワイナリーとして先駆け的な池田町ブドウ・ブドウ酒研究所。

生産・加工から販売まですべて地域住民と自治体が主体となって手がけ、外部資本の介入を許さない姿勢を貫く指針となり、今日では一村一品運動の元祖として、十勝ワインの開発への町をあげての取り組みの軸となっている「新農村建設事業計画」は、薄めの色合いで強い酸味と軽快な味わいを特徴とする「清見」を母親とする「清舞」や、山葡萄を父親とする、色が濃く、渋みや味わい深さを特徴とする「山幸」など、耐寒性が高く、かつワイン用として高品質の可能性が望める耐寒性交配品種など新品種を産み出し続けている。

テロワール=「土地」を意味するフランス語のterreから派生した言葉で、生育地の地理、地勢、気候による特徴を指すフランス語

池田町ブドウ・ブドウ酒研究所のおすすめワインとマリアージュの紹介

日本ワイン専門の卸を中心とし、国内役80社のワイナリー、約300アイテムを取り扱う日本ワイン専門酒販 株式会社東京葡萄酒の代表であり、J.S.A認定ソムリエールである枦山敬子さんと、日本橋 Allegroの店長兼ソムリエを務める根岸謙伍さんにおすすめワインを、また同日本橋 Allegro でシェフを務めるゴリシェフこと河野靖弘さんに各ワインに合うマリアージュを紹介いただきます。

山幸 2013

枦山さん

北海道十勝池田町産の清見種と山ブドウを交配して開発した山幸。
寒さに耐えられる品種はこの土地ならではの工夫と努力が詰まっています。
野趣溢れる香りと酸味が特徴です。

根岸さん

スミレや薔薇など花由来のアロマと心地よいタンニンがこのワインをより官能的なものにしてくれている。
複雑性のある香りと味わいは一口飲む度に新しい発見が見つかります。

ゴリシェフ

マルゲリータピッツァ、海老ラグー茄子の紫蘇ジェノベーゼペンネ、低温真空調理で仕上げたサガリ牛グリル マンゴー香る赤ワインソース、がオススメです

清見 2013

枦山さん

北海道十勝池田町で育成された品種で1973年にリリース。
酸味と豊かな果実味溢れるワインはまさに十勝を代表する土着品種です。

根岸さん

酸味の効いた味わいとスモモ、イチゴのような果実感はまるで甘酸っぱい青春時代のようです。
フレッシュな味わいに清々しさを感じる1本です。

ゴリシェフ

マルゲリータピッツァ、海老ラグー茄子の紫蘇ジェノベーゼペンネ、低温真空調理で仕上げたサガリ牛グリル マンゴー香る赤ワインソース、がオススメです

紹介したワインの購入に関するご相談

販売店 株式会社東京葡萄酒
Tel 03-6277-8770
Mail tokyowine@willplanning.jp

池田町ブドウ・ブドウ酒研究所(ワイン城)

URL http://www.tokachi-wine.com/
住所 北海道中川郡池田町清見83番地4
営業時間 9:00~17:00
定休日 年末年始
電話番号 (0155)72-2467
その他

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