親は、子どもの進路を望むように変えられるのか?年収格差が親子対立の原因となる理由

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過日、都内進学校から国立大学に進学した知人に、日本の大学進学率を推測してもらったところ「75%くらい?」という答えが返ってきました。

悪くない回答ですが、正解は現役で49.3%、浪人生を含めると52%です。短大も含めると56.8%まで上がります。

とはいえ、勘違いも無理はありません。人間は、自分の周りの環境から全体を推測します。東京都の大学・短大進学率は現役生のみで66.5%あります。さらに、彼の卒業した高校の進学率は98%だったそうです。

今回は進学率から、子育ての問題を考えてみました。

最終学歴で生涯賃金の多寡が決まる?

子育てをしている親が悩むのは、子どもの個性・志向と親の理想とのギャップです。

たとえば、開業医の親が、子どもに跡継ぎを望み、医師にするべく多額の教育投資を行うことはよく見られます。医学部専門予備校では、20代後半の多浪生の姿も珍しいものではありません。

親が、子どもにある程度のレールを用意して、望ましい方向に誘導するのは、子どもを思う親心の表れなので、いちがいに否定することはできません。

学歴別の推定生涯賃金

現代が学歴社会であることも事実です。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構によれば、学歴別の推定生涯賃金(退職金込み)は、大学・大学院卒の男性では3億1810万円ですが、高卒の男性の場合は2億3220万円と、働く年数が長いにもかかわらず27%減少してしまいます。

男性の生涯賃金
男性の生涯賃金(引退まで、退職金含む)

親の望む学歴、子どもの望む生き方

もちろん、人生の幸せは生涯賃金だけで、はかれるものではありません。
子どもの希望や夢を叶えてあげたいという気持ちは、どんな親でも少なからず持っているでしょう。

しかし、子どもが、必ずしも学歴が重視されない仕事(たとえば調理師や大工)に憧れて、たとえば中卒で職人の世界に飛び込もうとしたときに、「高校に進学してほしい」と思わずにいられる親は、現代日本にどれほどいるでしょうか。

親が理想とする学歴

現在、日本の高校(後期中等教育)進学率は、98%です。さらに、内閣府の調査によれば、親が子どもに望む学歴は「大学まで」が57.5%で最多回答でした。

「大学院まで」という回答もあったので、大学進学を望む親の割合は60.4%になります。「中学校まで」で良いと答えた親は、わずか0.1%でした。

子どもの理想的な学歴アンケート
親に聞く、子どもの理想的な学歴 n=3,197人

理想と現実のギャップ

ところが、同じ親に対して、現実的には子どもの学歴がどうなるかと訊ねたところ、大学進学するだろうと考えている親は50.9%に減少しました。これは、現実の大学進学率とも、ほぼ一致します。

子どもの理想的な学歴アンケート
親に聞く、子どもの現実的な学歴 n=3,197人

現実的な学歴の根拠の中で最多だったのが「子どもがそう希望しているから」(53.6%)でした。そのほか「子どもの学力から考えて」(33.1%)、「家庭に経済的な余裕がないから」(12.2%)などの理由があげられました。

いつの時代も、親の希望と子どもの希望には差異があるようです。

学歴と年収は不可分なのか?

学歴や年収が、人生の幸せを決定するすべてではないことはたしかです。しかし、学歴や年収が、あるからといって困るものでないこともたしかです。
子どもの幸せを願う親が、より高い年収の仕事や、それに近づくために高学歴を望むのは素直な気持ちの表れでしょう。

現実にはすべての子どもが大学教育を望むわけでも、大学教育を必要とするわけでもありません。
実際、日本における大学・短大進学率は2005年に初めて50%を越えた後は、2010年に56.8%、2016年も56.8%と、ほぼ横ばいを続けています。

このことは、必ずしも日本人が高等教育を望んでいないことを意味しません。なぜならば、専門学校も含めれば高等教育機関への進学率は80%もあるからです。
そこから考えられるのは、経済的な余裕があっても、大学以外の職業教育を望む人たちが、一定数存在することです。

進学先をめぐって親子間で意見が対立するのは、学歴によって年収や社会的地位に差がつく現実が存在するからだと、私は思います。

高卒のアニメーターも、専門学校卒の介護士も、大卒の営業マンも、さして変わらない給与を得られる社会になれば、世の中の親子喧嘩の総数も減るような気がします。

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