ひとりっ子相続の遺産総額と相続税は?メリット・デメリット

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ひとりっ子の場合、両親が亡くなった場合には、親の財産をすべて相続することになります。

兄弟がいる場合は、法定相続人全員が集まり遺産分割協議を行い、相続配分を決め、遺産分割協議書を作成します。このときに争い事が起こることが多いのですが、ひとりっ子の場合には遺産分割協議は必要ありません。

「だから気が楽」と思ったらとんでもありません。ひとりっ子だからこそ大変なこともあるのです。場合によっては相続税の負担が重くなることもあります。

では、ひとりっ子相続の場合は何が大変なのでしょうか?また、どのような点に気をつければよいのでしょうか?

主な相続手続きとは

では、相続手続きにはどのようなものがあるのでしょうか? 主なものをみていきましょう。

まず、亡くなった親の出生から亡くなるまでの戸籍謄本一式を取り寄せます。他に相続人がいないか、つまり、本当にひとりっ子なのか、ということを戸籍謄本等で証明しなければいけないからです。

戸籍謄本は、まず被相続人の最後の本籍地の役場で取得します。婚姻、転籍、改製などにより新しい戸籍が編製されている場合には、ひとつひとつさかのぼって出生時から死亡時までの戸籍を調査していきます。そして、それらを持って金融機関や法務局などで相続手続きを行うことになります。

また、被相続人のすべての財産を洗い出す必要があります。金融資産、不動産、保険、さらに借金などがあればそれらもすべて調べていきます。不動産は評価額の算出が難しい場合もあるので、専門家の力を借りる必要があるかもしれません。

そして、課税遺産総額を算出し、相続税がかかる場合は、通常、相続開始から10ヶ月以内に現金で納付します。ひとりっ子相続の場合は控除額が少ないため、多額の相続税がかかることも考えられます。また、「小規模宅地等の特例」など、相続税の軽減措置を利用する場合は、相続税がかからなくても10ヵ月以内の申告が必要です。

相続手続き以外にもやることはたくさんある

その他にも、被相続人が年金をもらっていたならば年金支給停止の手続きをしたり、生命保険に加入していたならば保険金の請求をしたり、所得税等の未払いなどがあれば支払の手続きをしたり、健康保険証を返還したりなど、相続以外にも様々な手続きがあります。

親の重要な書類はどこにあるのか、どのような財産があるのか、生命保険等に加入していたのかなどを全く把握していない場合には、それらを調べるだけでも一苦労です。

これらの手続きはひとりっ子に限ったことではありませんが、ひとりっ子の場合は、一人であるがゆえに手続きもすべて一人で行わなければならず、負担が大きいということがいえるでしょう。

課税遺産総額3,600万円以上で相続税が発生

ひとりっ子相続の相続税の計算は、おおまかに以下のようになります。

  1. 親が遺した遺産額から債務や葬儀費用等を差し引き、相続時精算課税を適用した贈与額や相続開始から3年以内の贈与額などを加算し、正味の遺産価額を求める。
  2. 正味の遺産価額から、遺産にかかる基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を求める。
  3. 課税遺産総額に相続税率をかけて相続税を算出する。

基礎控除額とは

『3,000万円+600万円×法定相続人の数』です。法定相続人とは、法律で定められた相続人のことをいいます。
相続税を計算する上では、この基礎控除額が多ければ多いほど、課税遺産総額が少なくなるため、支払うべき相続税額は少なくなります。

しかし、ひとりっ子相続では法定相続人は一人。よって、基礎控除額は3,600万円です。

つまり、3,600万円よりも課税遺産総額が多い場合は、相続税がかかることになります。

首都圏などに不動産を持っている場合は、それだけで基礎控除額を超えてしまうかもしれません。

「自分は資産家ではないから大丈夫」と思っていても、相続税がかかる可能性があるのがひとりっ子相続なのです。

『小規模宅地等の特例』が利用できる場合は、親から相続した居住用宅地等についてはその評価額を大幅に引き下げることも可能です。
このとこについてはまた次回ご説明しましょう。

ひとりっ子の相続は税率が高くなる?

相続税率は累進課税のため、受け取る遺産が多いほど、税率は高くなります。

法定相続人が複数いる場合は、課税遺産総額を各法定相続人に法定相続分(法律で定められた相続の割合)で分けたと仮定して、それぞれに税率をかけ相続税を計算します。

つまり、遺産がいくつかに分割されるため、一人あたりの受け取る遺産額は小さくなり、税率も小さくなります。

では、ひとりっ子の場合と兄弟がいる場合とでは、一人あたりの相続税はどのくらい違うのでしょうか?

下記の表では法定相続人を子のみとし、正味の遺産価額を法定相続人が法定相続分に基づいて相続したと仮定して計算しています。

遺産の価額と子1人あたりの相続税

遺産の価額 5,000万円 1億円 2億円 3億円 6億円
ひとりっ子 160万円 1,220万円 4,860万円 9,180万円 2億4,000万円
2人兄弟 40万円 385万円 1,670万円 3,460万円 9,855万円
40万円 385万円 1,670万円 3,460万円 9,855万円
3人兄弟 7万円 210万円 820万円 1,820万円 5,660万円
7万円 210万円 820万円 1,820万円 5,660万円
7万円 210万円 820万円 1,820万円 5,660万円

1万円未満は四捨五入。遺産の価額は各人の正味の遺産価額の合計額(遺産にかかる基礎控除額控除前の金額)

一人あたりの相続税を見てみると、例えば、遺産の価額が5,000万円の場合、ひとりっ子は160万円ですが2人兄弟の場合は各40万円、3人兄弟の場合は各7万円となります。

ひとりっ子は2人兄弟の4倍、3人兄弟の約23倍の相続税を支払うことになるわけです。

もちろん、ひとりっ子は一人で相続するので、兄弟がいる場合よりも多くの遺産を相続します。「多額の遺産を相続するならば、相続税だって支払えるはず」と思うかもしれません。

しかし、相続税は原則、相続開始から10ヵ月以内に現金で支払わなければなりません。

通常、多額の資産を持つ方というのは、不動産で保有していることがほとんどです。相続財産がほぼ不動産のみという場合は、別途相続税を支払えるだけの現金を用意する必要があります。

これはひとりっ子相続に限ったことではありませんが、相続税を支払うだけの現金をどのように用意するかは、相続を考える上でとても重要です。

親名義の生命保険に加入する、生前贈与するなど、いくつかの方法はありますが、相続対策は自己流で行わず、専門家と相談しながらしっかりと準備をした方が良いでしょう。

親の方から相続の相談をもちかけてみては?

相続対策には、まず財産がどのくらいあり、いくらの相続税がかかるのかを試算することが大切です。

ただ、子どもからは相続の話題はなかなか言い出しにくいもの。できれば親の方から、相続について子どもに話しかけてあげてください。

相続時の負担を減らすには、生前からの親子間のコミュニケーションが大切です。できれば、重要書類の置き場所などは親と一緒に確認しておくとよいでしょう。

親側も子に負担をかけたくないと思うなら、金融資産や不動産などの財産一覧を作成するなどの準備をしておきたいですね。エンディングノートなどを作成し、そこに必要なことをすべて記入しておく、というのも一つの方法です。

家族が円満であれば、相続問題も円満に解決できるはずです。

※1:相続時精算課税:原則、60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、合計2,500万円までの贈与は贈与税が非課税となる制度。2,500万円を超えた分に対しては一律20%の贈与税がかかる。なお、贈与者死亡の場合は、相続時精算課税により贈与された金額は相続財産に加算され相続税が課税される。

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