民泊需要や特区民泊の申請方法は?トラブルや苦情は?大田区に直接インタビュー

読了目安[ 8 分 ]

日本を訪れる外国人が年々増えています。さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控えて、新しい宿泊の形態である民泊への注目がますます高まっています。

そんな民泊をいち早く、積極的に活用しようと動いている自治体が、東京都大田区です。

マネーゴーランド編集部では、特区民泊申請や問い合わせの窓口となる大田区生活衛生課の主事、木下さんにインタビューを行いました。

取材を通して、大田区の民泊に対する取り組みや具体的な立ち回り、問題点など、具体的に特区民泊を運営しようと思ったときに抱く素朴な疑問を含めて理解することができました。

そもそも民泊とは

ホテルや旅館などの宿泊施設ではなく、民家を宿泊施設として利用するのが「民泊」です。たとえば、空き家や自宅の使用していない部屋などを旅行者に貸し出す場合が当てはまります。

訪日外国人の数は2014年で1,341万人にのぼり、東京オリンピックが開催される2020年の政府の目標は4,000万人と発表されています。

「大田区に宿泊する外国人の数も2013年は9.1万人から2014年には前年比45.5%増の13.3万人と着実に増え、2年後には15万人と目標を立てています」(大田区役所生活衛生課主事の木下さん、以下「木下さん」)

一方、訪日外国人の数が増えるとともに懸念されているのが、宿泊施設の不足です。

「大田区内の宿泊施設の稼働率は2013年で86.2%、2015年では90.2%ととても高い水準で推移しています。さらに大田区は羽田空港があり、国内外からの旅行者の利用がとても多い地域のため、民泊への注目が高まっているのです。」(木下さん)

民泊に関する大田区役所への独占取材、マネーゴーランド

大田区の特区民泊とは

ホテルや旅館、下宿、簡易宿所などの宿泊施設を運営するためには、「旅館業法」という法律に基づいた許可が必要です。

しかし旅館業法の規定で、旅館営業の場合は設備として客室が5室以上必要などの基準や、条例における玄関帳場の設置義務などのルールがあります。

「そこで国は、国際競争力を強化しようと、”国家戦略特区”を設けて旅館業法の適用を除外し、宿泊業のハードルを低くした”旅館業法の特例”を認めたのです。急増する宿泊ニーズに対応しようと、大田区は2015年10月に内閣総理大臣から事業認定を受けました。そのため、大田区で民泊を行う場合は特区民泊の条例に則って行えば、旅館業法の許可を取る必要はないのです。」(木下さん)

民泊に関する大田区役所への独占取材、マネーゴーランド

民泊相談件数1399件、説明会参加者1013名

2016年1月に全国で初めて特区民泊の取り組みを始めた大田区の反響はどうだったのでしょうか?

「2016年1月から開催した特区民泊の説明会には、多数の方が来場され、立ち見や会場に入りきらない方がいたほどでした。そのため当初の予定よりも説明会の回数を増やし、5回の説明会で述べ1,013名が参加されました。」(木下さん)

電話等での相談も多く、これまでの相談件数は1,399件(2016年10月4日時点)にのぼっているそうです。

説明会参加者や相談者の中には、特区民泊を運営したい人のほか警備会社や保険会社関係者、行政書士など、特区民泊から派生した仕事に関わる人も含まれているそうです。

特区民泊の取り組み開始から1年弱が経つ現在、大田区特区民泊の認定を受けているのは24施設77居室です。

民泊に関する大田区役所への独占取材、マネーゴーランド

大田区の特区民泊の条例とは

大田区で特区民泊の申請には、クリアしなければいけない条例のがあります。主なポイントとなるものは以下のとおり。

1.施設を利用させる期間は7日以上
2.認定取り消しに必要な限度において、認定事業者の事務所または滞在施設に、大田区職員が立ち入ったり質問することができる
3.近隣住民に対して、事前に特区民泊運営の旨を周知する

「ただ、施設利用期間が7日以上(6泊7日以上)と定めていることについて、事業者からはハードルが高いという声を多く聞きます。今後は変更される可能性もあるかもしれません。」(木下さん)

また、特区民泊のの条例のほかに、滞在者の本人確認、消防法による設備等の設置義務、近隣住民から苦情があった場合の対応などについても、規則やガイドラインで定められていて、特区民泊運営者はそれに従うことが求められています。

民泊に関する大田区役所への独占取材、マネーゴーランド

大田区の特区民泊の申請方法

では大田区で特区民泊の申請をしたい場合、どうすれば良いのでしょうか。

民泊に関する大田区役所への独占取材、マネーゴーランド

1.大田区生活衛生課での事前相談。事業を計画している施設の平面図等を持参するとスムーズです。
2.必要に応じて、新築物件や用途変更が必要な場合は建築審査課での相談を行います。
3.所轄の消防署予防係に事前連絡の上、事前相談をします。この際も平面図等を準備し、設置されている消防用設備等を把握しておきましょう。
4.近隣住民へ特区民泊を運営する旨を周知するため、書面を用意します。書面は大田区生活衛生課で確認します。

※申請方法や必要書類等は取材時(2016年10月)のもので、変更等が行われる場合があるため、事前に必ず問い合わせするようにしてください。

その他大田区の民泊への取り組みに対するQ&A

Q1:大田区で特区民泊の取り組みを始めて約10ヶ月になりますが、どんな感触を受けていますか?

大田区と同じように”国家戦略特区”に制定された大阪府の場合、認定施設がまだ4施設にとどまっていますが(2016年10月取材時)、大田区では24認定77居室と順調な印象です。また実際に大田区で特区民泊を行っている方の中には、集客ができて稼働率も高い物件があるという話を聞いています。

Q2:特区民泊を行っているのはマンションと一軒家とどちらが多いですか?

現在認定されている24件のうち、一軒家は7件。それ以外はすべて共同住宅タイプですね。新築の住居を、特区民泊の条件がクリアできるような造りで建てておき、もし将来民泊の需要がなくなったら一般の住居として使おうと計画されているケースもあります。

Q3:大田区で特区民泊の申請をしている人は、個人の方ですか?法人ですか?

現在認定されている24件のうち、個人で運営している方は2割ほどでしょうか。それ以外は法人ですね。

民泊に関する大田区役所への独占取材、マネーゴーランド
(大田区で特区民泊の認定を受けた施設 写真提供:株式会社ファイブエム)

Q4:特区民泊の申請にかかる期間はどのくらいですか?

申請から認定までの期間は基本的に15日以内です。ただ申請前に、消防法令にのっとって、改修等の準備が必要になる場合もあります。そういった場合はもっと準備期間がかかりますね。

Q5:特区民泊の申請にかかる費用はいくらですか?

大田区の特区民泊の申請手数料は20,500円です。個人の方の場合、行政書士の方に手伝っていただく方がほとんどのようで、そのような行政書士等への費用や消防設備等の準備などで、別途費用がかかることもあるようです。

Q6:特区民泊認定を受けた後、更新する必要はありますか?

いいえ、一度認定を受ければ更新の必要はありません。もし建物や部屋を立て替えたりリノベーションしたり変更があった場合は、区へ変更の手続きをする必要があります。

Q7:特区民泊に関する問い合わせや相談で多いことは何でしょうか?

大田区内でも、特区民泊が可能な地域とそうでないところがあります。そのため「このエリアは特区民泊OKか」という問い合わせが多いですね。

Q8:特区民泊の宿泊料については、自由に設定できるのですか?

宿泊料に関して、大田区で取り決めているルールなどはありません。運営する方が自由に設定しています。大田区内の銭湯の利用を促進する、銭湯と宿泊をセットにしたプランや、宿泊と観光ツアーを組み合わせて販売しているパターンなどもあります。

Q9:特区民泊を運営する上で、宿泊者の本人確認をしなければいけないそうですね?

はい、大田区の民泊の規則とガイドラインで、「使用時と使用終了時に本人確認をすること」と定められています。外国人の場合は旅券(パスポート)の提示を求め、その写しを滞在者名簿とともに3年以上保管しなければいけません。

Q10:宿泊者へ宿泊場所の鍵の受け渡しはどうしているのでしょうか?

民泊運営者が不動産会社などの法人の場合、近くにホテルや不動産屋等があるときは、そこで鍵の引き渡しを行っている実例があります。また物件の前で民泊運営者と宿泊者が待ち合わせをして、鍵を渡すというパターンもあります。

さらに最近では、暗証番号を設定できる「電子錠」を入口に設置して、宿泊者にあらかじめ暗唱番号を連絡しておく、というやり方もあります。

Q11:これまで特区民泊に関連するトラブルはありますか?

今現在トラブルも苦情もありません。ただし、近隣の住民から「あそこの部屋(家)が騒音がひどい。違法で民泊をやっているのではないか…」といった連絡がくることはあります。そのような場合は、区役所の職員が調査しに行くこともあります。

Q12:特区民泊を始める際一番気をつけることは何でしょうか?アドバイスをお願いします

「民泊」と聞くと、良いイメージより悪いイメージを持っている方の方が多いようです。そのため、近隣住民の方への周知を含め上手な関係性を築き、それをおろそかにしないことが大切と感じます。

大田区民泊取材レポート

今回大田区大田区生活衛生課の木下さん、住吉さんに取材を行って、自治体の民泊への取り組みの一端を垣間見ることができました。

メディアでは民泊というとトラブルばかりが取り上げられ、旅館業に違反した疎まれる存在だというイメージを持っていた人もいるはずです。

ただ、それよりも2020年に向けて実際に宿泊施設が足りないことは大きな問題です。海外からやってきた外国人が、こぞって公園で寝ていたらどう思うでしょうか。

私たちにできることは多くはありませんが、せめて裏方として必死に動いている方、実際に民泊を運営して様々な問題解決や新しいビジネスチャンスを掴もうとしているかたの応援ができればと思います。

民泊に関する大田区役所への独占取材、マネーゴーランド
(取材に応じていただいた、大田区役所生活衛生課の木下さん、住吉さん)

民泊に関する大田区役所への独占取材、マネーゴーランド
(取材した大田区役所大森地域庁舎)

⚫️民泊の申請・問い合わせ:大田区役所生活衛生課(大森地域庁舎)
https://www.city.ota.tokyo.jp/kuseijoho/kokkasenryakutokku/ota_tokkuminpaku.html
電話:03-5764-0693

※ここで紹介した情報は、取材時(2016年10月)のもので、変更等が行われる場合があります。
大田区で特区民泊の認定を受けた施設の写真提供:株式会社ファイブエム

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