EU離脱でイギリス株上昇の理由は?金鉱山・資源株の影響力が強い
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よく日本は小さな島国(面積377,914平方キロメートル)と揶揄されますが、日本よりも小さい島国(面積244,820平方キロメートル)のイギリスは、世界最強の覇権国として20世紀以降の世界に君臨していました。
日本も明治維新以降に日英同盟を結び、イギリス覇権の一翼を担っていたことはご存知ですよね。
ただ、第一次・第二次と続いた世界大戦、その後の植民地独立、アメリカの台頭によって、イギリスは世界の覇権国の地位を譲り渡すことになりました。
ただし、大英帝国時代よりも力を失ったとは言え、今でもイギリスは世界に大きな影響力を持っています。
そんなイギリスの近年の大きな動きは、2016年のEU離脱の決定です。このイギリスの動きによって、イギリスは影響力が低下したのでしょうか。
今回は、イギリスのEU離脱で英国株がどうなったか、イギリスの影響力を支える金鉱山・資源株についてお話します。
この記事の目次
金鉱山・資源株を握るイギリス
イギリスのEU離脱投票後、市場がイギリス経済の落ち込みを嫌い、イギリス株が売られると思った人は多いでしょう。実際に、ロンドンの不動産価格は軒並み下落しました。
ところが、市場の思惑とは異なり、イギリスの株価は上昇しました。この理由の1つは、イギリスの持つ金鉱山・資源株の力です。
イギリスのEU離脱投票が行われると、市場リスクを恐れた投資家は、慌てて資源関連にお金を移動させました。つまり、現物の金(ゴールド)や資源関連株の購入です。
その結果、金(ゴールド)や資源関連株が上昇し、資源関連株に強いイギリスの株価は上昇しました。
「イギリスなのに資源?」と思うかもしれませんが、イギリスは今も世界の金鉱をはじめとする鉱山株をたくさん保持しているため、イギリスを無視して、金(ゴールド)を語ることはできません。
イギリスは、世界の覇権とともに植民地は手放したものの、金鉱山株をはじめとした株式の保有はいまだに多いのです。
世界の株式時価総額
世界の株式時価総額では、アメリカ52.2%、日本8.8%に次ぐ第三位がイギリスの6.1%で、ドイツやフランスよりも上となっています。
2015年度世界の株式時価総額:国別シェア(%)
この株式から上がる収益と北海油田は、イギリスの大きな権益になっています。つまり、イギリスの影響力は、大きな資源と資源株を背景に保たれているものだと言えます。
そのため、もしスコットランドが独立すれば、北海油田の権益の行方が大きな問題になります。
では、イギリスが持つ主な金鉱山・資源株とはどのようなものでしょうか。
イギリスの主な金鉱山・資源株
Anglo American(アングロ・アメリカン)
アングロ・アメリカンは、有名なダイヤモンド会社のデビアス社を傘下に持つ会社です。南アフリカのダイヤモンド・金の帝王と称されたアーネスト・オッペンハイマーが1917年に創業し、以降世界最大クラスの資源を保有しています。
BHP Billiton(BHPビリトン)
BHPビリトンは、オーストラリアのBHPとイギリスのビリトンの合併会社です。ビリトンは、インドネシアのビリトン島での資源開発が大元の会社で、アジア・オセアニア地域に多くの鉱山や資源権益を持っています
Rio Tinto(リオ・ティント)
リオ・ティントは、アルミ・ダイヤ・金・ウランなどの生産を行う資源に関する世界企業です。元は、有名な財閥「ロスチャイルド家」の持つ基幹企業で、世界経済の歴史において登場する頻度の多い会社でもあります。
興味のある方は、アングロ・アメリカンやリオ・ティントについて調べてみると、面白いですよ。欧州を支配した財閥「ロスチャイルド家」が、金融・鉱業を握ってきた歴史を見ることができます。
資源を持つ国の強さ
金(ゴールド)の生産量では、中国やアメリカの方が上ですが、南アフリカをはじめとしたアフリカの資源埋蔵量はまだまだ多いと予想されています。
ナイジェリアの石油をはじめ、アフリカ開発に欧米・中国が躍起になっているのも、アフリカ諸国にある資源の価値を良くわかっているからです。
EU離脱でイギリスの力が弱まるとの論も聞きますが、今後の流れを見ると、イギリスが抜けたことで困るのはEUになる可能性が高いということが、金(ゴールド)や鉱山株を巡る動きでも理解できます。
今のところイギリス抜きでの欧州経済は成り立ちませんし、他国と比べてドイツの力が強すぎるためEUは安定しません。
世界の覇権をアメリカに譲ってからも、イギリスの隠然たる影響力はまだまだ大きいことをお忘れなく。
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