大型連休になるとなぜ多発?「雪山遭難事故」は未然に防げる!

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なぜ大型連休になると山岳事故が多発するのでしょうか。
無謀な登山による山岳事故が相次ぐ大型連休。
突然の天候崩れなども事故原因の一つですが、そもそも山の天気は変わりやすいものです。

私個人の主観ですが、今年は例年にない雪の少なさだったことから
「まだ5月だけど雪も解けて登りやすくなってるのでは?」
と誤解した登山初心者が増えたのではないでしょうか。
例年ならまだ雪に閉ざされているはずの登山道が、早くも夏道になっている場所も多くなっています。

冬山とは異なる春山の厄介さ

ただ春山というのは、残雪と岩などがミックスした歩きづらい道が多く、融雪による雪崩もおきやすいため、冬山とは違った厄介さがあります。
また大型連休前後は日によって夏日になったり、吹雪いて新雪が降ったり、一年の中でも不安定な天候がつづく季節なのに、一度晴れ間を見たらそんなことはすっかり忘れてしまうのも人情といえましょう。

雪山遭難にかかる捜査費用は100万~数千万円!?

今回の事故では救助活動のため、警察や消防などのヘリコプターが何度も出動しました。
公共機関の山岳救助隊、山岳警備隊などの出動は税金で賄われる範囲ですが、それだけでは手が足らなかった場合、地元消防団や山岳会などの民間人に出動要請をすることも。

遭難から日がたってもまだ見つからない…
といった場合は民間機関で捜索を続行することになりますが、出動した人数分の日当や民間ヘリのチャーター代、その他諸々でトータル100~数千万円などという費用が、遭難者や家族に請求されることもあります。

今回は大型連休に多発しやすい雪山遭難から身を守り、捜索に多大な金額を費やすのを未然に防ぐ方法について考えていきたいと思います。

平地は夏日でも山頂は「冬真っ只中」

春山というのは、標高によってはまだ「雪山」です。山麓の季節と山頂の季節はイコールではない、ということを念頭に置かなければいけません。

気温について

気象庁による温度・湿度のコラムによれば、標高が100m上がるごとに気温は0.5~1度下がるそうで、地理や理科の教科書等では0.6度と記しているものが多く見られます。
例えば標高0mの地点で最高気温25度の夏日を記録したとして、標高100mごとの気温差を-0.6度で単純計算しましょう。

大型連休に事故が多発した穂高の登山口・上高地は標高約1,500mなので、最高気温はおよそ16度。
3,190mの奥穂高山頂に至っては最高気温わずか6度前後となります。

ちなみに6度は東京の1月の平均気温に相当。また風が吹くと体感温度は更にぐっと下がるので防寒着は必須です。
平地が夏の陽気でも、山の季節はまだまだ冬の真っ只中といえるでしょう。
標高1,500m以上の山域に入山する際には、きちんとした冬山の装備が必要なことがわかりますね。

行きたい山域の事前情報に注目!

登山が盛んな山域では、公共の機関、観光協会、小屋公式サイトなどの情報サイトが充実し、しっかり啓蒙活動しているところが多く、それぞれのサイトで天気状況や登山道の状況、必要な装備など事細かく情報発信して注意喚起しているのをよく見かけます。
また山岳情報サイトとも連携して、最新情報がいつでもどこでも得られるようになり、昔の登山事情と比べると格段に進化した感があります。

例えば八ヶ岳の赤岳エリアにある山小屋・赤岳鉱泉の公式ブログ「鉱泉日誌」の4月16日の記事によると、

樹林帯及び稜線上の日陰や吹きだまりに残雪が多いところで50センチメートル弱有ります。
全体的に雪が腐っていて、アイゼンが効きにくかったり、アイゼンに雪が絡みつきやすいです。
日向は雪が無く、岩肌が見えている箇所が有ります。
雪稜が細く、いつ雪が崩れてもおかしくない箇所も有ります。
慎重なピッケル、アイゼンワークが求められる状況です。
何度も申し上げますが、例年と比べて残雪は少ないです。
しかし、赤岳鉱泉・行者小屋から上に登る場合には、ピッケルと最低10本爪が必要です。
鉱泉日誌

このように
「慎重なピッケル、アイゼンワーク」
「ピッケルと10本爪以上のアイゼン」
これらが必要なことを丁寧に案内しています。
ところが12日の記事でも同様の案内をしているにも関わらず
「軽アイゼンやチェーンアイゼンで赤岳を目指して、途中で敗退したり、滑落した方がいらっしゃいました」
と嘆いています。

事前の適切な情報収集と見極めがきちんとできていれば、不幸な事故は必ず未然に防げるのに、それすらしない安易な登山ユーザーが増えているようです。

装備は十分でもスキル、体力がなければ意味はない

今回事故が起こった穂高周辺では、トレランシューズにアイゼンを装着していたり、ピッケル不所持など装備が不十分なケースが目立っていたそうです。
また十分な装備がないまま雪山に入山するのもいけませんが、装備を使いこなせなければ持っていても意味がありません。

雪山登山ギアの筆頭「ピッケル」には、歩行のバランスを取る杖としてだけでなく、グリセード(かかととピッケルを使って斜面を滑り降りる技術)やラッセル(雪かき)、急な雪面で「滑落停止」をする重要な役割があります。
しかし斜面に対してピック(尖った方)とブレード(平らな方)の方向を登りと下りで変えないといけないことがわからず、単にお守り代わりに持っているだけの人も数多く見られるそうです。

私自身いまだにピッケルは所持しておらず、ピッケル必携と言われる山域には冬の間一切近づかないようにしているので、私からお伝えできる情報はここまでです。m(_ _)m
つまり必携ギアを持っていても、的確な使い方を身に着けていなければ滑落死も免れません。
それを肝に銘じて、行きたい場所に応じたスキルを磨くなり、入山を控えるなりの配慮が必要です。

他人のタイム自慢、体力自慢を鵜呑みにしない

登山の世界には負けず嫌いな人が多いようで、最近気になるのが
「あの山へ登るのに○時間?俺なんかその半分だぜ!」
というタイム自慢や体力自慢をするトレラン勢と、それらを真に受けて
自分もそのスピードでいける!
と勘違いしてしまう困った登山ユーザーの存在です。
自慢するだけならまだ可愛いげもありますが、
「おまえらたいしたことないな!」
などと他人を見下す
「山マウンティング男子」(この言葉、流行るかな?)
も増えたような気がします。

季節や天候、体調、体力など“たまたま”好条件が揃った他人の「自慢記録」をそのまま鵜呑みにしてしまうのは大変危険です。
登山というのは心に余裕のある紳士淑女たちが嗜む趣味であり、勝ち負けを競う競技ではない、と個人的には思っています。

心にゆとりを持ち、人に惑わされることなく自分のペースを守れば、危険な状況は自ずと回避できるものなのではないでしょうか。

写真は赤岳鉱泉小屋の前にある、アイスクライミング練習用に作られた人工氷瀑「アイスキャンディ」(解凍作業中)です。

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