【NISA(ニーサ)_前編】真説・投資ドリの世界[図録傑作選]

3

読了目安[ 4 分 ]

今日も都会の大空を羽ばたく、勇ましくもはかない投資ドリの群れ。なにゆえ彼らは飛び、なにゆえ彼らは我々を惹きつけてやまないのか。人と投資ドリの不思議な関係、そして依然として謎に満ちた彼らの生態を、美しいスケッチと合わせて詳細につづった画期的試み。

飼育ドリは飼うと、飼い主にお金を運ぶ不思議な鳥です。

NISA(ニーサ) 
(少額投資非課税制度/Nippon Individual Saving Account)

科名 シサンウンヨウ科
生息 日本
投資枠 毎年100万円まで
飼育期間 5年間
生息期間 2014〜2023年(予定)

前編:なぜNISAは日本社会に受け入れられたのか

2014年1月、なにかとお騒がせの日本投資鳥研究学会、通称日投鳥研(にっとうちょうけん)(*1)が、鳴り物入りで発表した投資ドリの新種であり、2015年現在、NISA(ニーサ)の名は一種の流行語として全国的な知名度を誇っている。その浸透ぶりは、写真を撮る若者たちの掛け声が、「はい、チーズ」から「はい、ニーサ」に変わったことや、教育テレビ番組『1+1は2さ!』の大人気で、子供たちの計算力が飛躍的に向上しつつあることからも、充分に想像できよう。

 とはいえ、実際のNISAがどんな鳥かを知っている者は意外と少ない。ましてや、ブリーダー(*2)として飼育するとなると、依然として根強い投資ドリに対する偏見から、「シロウトがうかつに手を出してはいけない」と考える者がほとんどである。このあたり、どうも名前だけがひとり歩きしている感が否めないが、過日、日投鳥研のある役員に、そのあたりのことを聞いてみると、「想定内です」との答えが返ってきた。「我々はですね」とその役員は言うのである。

 「若者たちや、小さなお子さんをお持ちの親御さんたちにこそ、NISAを飼育してもらいたいのです」

 つまり、彼らは「シロウト」を新規ブリーダーにしたいのであり、そのためには、まず名前から入って、子供を取り込み、徐々にシロウトの日常に馴染ませようというわけである。考えてみれば、NISA(ニーサ)という名前も、どこか旧共産圏の小熊のキャラクターのような(*3)素朴で人懐っこい響きがあるが、それもシロウト対応の懐柔策のひとつということであれば、日投鳥研も案外したたかというべきであろう。

 彼らがこうまでしてブリーダーの増加に躍起になっている背景に、ツミタテ科の「貯蓄ドリ」の台頭があることは言うまでもない。先行きへの不安が広がる昨今にあって、鳥かごの中でただジットしているだけの貯蓄ドリは、産みも増やしもしないが、決して裏切ることのない「安心」のシンボルとして、万人に受け入れられている。いっぽう、シサンウンヨウ科の投資ドリは、おとなしいかと思うと突然クチバシでつつき、死んだかと思うと産卵したりと、そのナイーブでエキセントリックな生態は、確かに刺激的ではあるものの、どうにも「先が読めない」のである。そうした風潮に対する、日投鳥研の切り札がNISAであるのだが、先の日投鳥研の役員は、「いや、逆手に取ったまでですよ」と得意気に語るのである。

 「安心・安全の投資ドリ、それがNISAなんです」

 2016年には、20歳以下でも安心して飼育できる「ジュニアNISA」も控えているという。しかし、彼らがこのように露骨に擦り寄ってくればくるほど、「なにかウラがあるに違いない」と勘ぐりたくなるのは、シロウトもクロウトも関係ない国民一般のコンセンサスであろう。
(*1)別名、日本政府である。 (*2)または投資家とも言う。 (*3)ここで筆者が「こぐまのミーシャ」を念頭に置いていることは間違いない。


※イラスト 市橋俊介

同じカテゴリの記事 この著者の記事を表示

コメントを残す

  • コメント欄には個人情報を入力しないようにしてください。

  • 入力いただいたメールアドレスは公開されませんがサーバーに保存されます。
  • 入力いただいた情報の他に、IPアドレスを取得させていただきます。取得した IPアドレス はスパム・荒らしコメント対処ために利用され、公開することはありません。