お金にまつわるアフォリズム その2.J・M・ケインズ

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「株式投資とは美人コンテストである。この投票で賞金を得るには、あなたが美人と思う人が重要なのではなくて、多くの人々がどんな女性を美しいと思うかが重要であり、あなたの好みとは無関係である。相場の時価は美人投票の結果である」

J・M・ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』

 かつて人気を博したテレビのクイズ番組で、100人に聞いたアンケートを、回答数の多い順に当てていくというものがあったが、たとえば「おでんの具といえば」と100人に聞き、より多くの人が回答するであろう「おでんの具」を、出演者が予想して当てていくのである。この場合、「だいこん」が断然トップであることは容易にわかるので、まずは「だいこん」を、次いで「たまご」「こんにゃく」あたりを「あるあるある」と念じながら答えていくのだが、重要なのは、どの「おでんの具」が、より多くの人に好まれているかであり、どの「おでんの具」が、自分の好みかではない。したがって、いくらダシが染みていようと「もち巾着」などと答えては、優勝のハワイ旅行は望めないのである。

 株式投資におけるジョン・メイナード・ケインズの名高い「美人投票論」とは、このような大衆が大衆を品定めして一喜一憂するありようを、「おでんの具」ではなく「美人コンテスト」に置き換えて述べたものである。すなわち、投資家である自分が、どれほど特定の銘柄を評価しようと、株価の値動きは、その時どきのニュースや風評によって、上がりもすれば下がりもする。結局、重要なのは、個人的な見解でも客観的なデータでもなく、より多くの投資家が何を評価しようとしているか、その見極めと判断なのである。ここで初めて、ケインズが「おでんの具」ではなく、「美人コンテスト」を例えに持ってきた理由がわかるであろう。この種の予想あてクイズにおいて、「おでんの具」ほど定番でおあつらえ向きの題材はない。そのことを、天下のケインズが、知らないわけはないだろう。しかし彼はこう考えたのだ。

 「おでんの具では、だいこんがあまりに強すぎる」

 そう、「おでんの具」において「だいこん」は、その時どきのニュースや風評に関わらず、不動のトップなのである。すなわち、株式投資のような実体の見えない不安定要素が、「おでんの具」には決定的に欠けているのだ。そこで「美人コンテスト」を持ってくるあたりが、やはりケインズの慧眼と言うべきであろう。なぜなら「美人」ほど、不安定要素に満ち満たものはないからである。小野妹子は「美人」か。ミスコンの女王は「美人」か。女性アイドル集団のセンターは「美人」か。こうした「美人」にまつわるパラドクスに、近年、一石を投じたのが、例の「じゃんけん」であることは周知の事実である。これにより、株式市場にも「じゃんけん」が導入されるか否か、いま経済界は重大な岐路に立たされているといえるだろう。

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ケインズ自身、株式投資でひと財産を築いていることも、「美人投票論」に説得力を持たせている要因であろう。ただしケンブリッジ大の成熟した同性愛文化で青春をおくった彼が、「美人コンテスト」にどこまで関心を抱いていたかは定かではない。

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