ゴジラが現実に現れたら、日本はどうなるのか?「シン・ゴジラ」が描く“組織の美学”

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 映画『シン・ゴジラ』の快進撃が続いている。興業収入は8月19日に40億円を突破した。SNSでは議論が盛り上がっており、リピーターも後を絶たない。50億円突破も確実と言われており、今年一番の話題作となりそうだ。

 東京湾・羽田沖に水蒸気爆発とともに姿を現した巨大不明生物。日本政府の楽観的な観測をよそに巨大不明生物は東京に上陸。政府の対応が遅れる中、巨大不明生物は急速に進化を遂げていき、やがて東京を火の海に変える。

 キャッチコピーは現実(ニッポン)vs虚構(ゴジラ)。本作は圧倒的な力を誇る巨大不明生物・ゴジラに対して政治家、官僚、自衛隊、民間企業が力を結集して立ち向かう姿が描れている。ストーリー自体は単純明快だが、もしもゴジラが現実に現れたら、日本はどうなるのか。どう政府は対応するのか、という手続きの部分を徹底的に描いている。

 総監督はアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、『エヴァ』)で知られる庵野秀明。監督は平成ガメラシリーズの特技監督や映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』の監督で知られる樋口真嗣。特撮やアニメが好きならオタクにとっては、文句なしの最強の制作陣だ。

 とはいえ「怪獣が出てくるような映画にはそもそも興味がわかない」という人も多いだろう。しかし、この『シン・ゴジラ』に関しては、アニメや特撮には興味がない人「怪獣映画なんて自分には関係のない」と思っている人が見ても面白いのではないかと思う。

 もちろん、庵野秀明と樋口真嗣が作り上げたゴジラが東京を破壊するシーンは凄まじく、一番のみどころなのだが、そんなゴジラがもたらす破壊の恐怖を描くために繰り返されるリアルな会議場面こそが本作の面白さを支えている。

 そこに、10~20代の時に『エヴァ』を見て育ってきたオタク世代にとっての“仕事における組織の美学”が描かれている。

 政府の対応が遅れる中、内閣官房副長官(政務担当)の矢口蘭堂(長谷川博己)を中心に、ゴジラに対応するために、各省庁のはぐれ者たちを集めた巨大不明生物特設災害対策本部、通称「巨災対」が結成される。

 意思決定が遅い政府に対して「巨災対」は極めて合理的で、自分のやるべきことを一人一人が邁進していく。

 本作を見て圧倒されるのは、情報量の異様な多さだ。登場人物が多く早口でしゃべり。画面には次々とテロップが登場しては、カットがすぐに切り替わっていく。そこには、情報の塊がひたすら押し寄せてくるような威圧感がある。それは映画としてはいびつで、11年の東日本大震災の時にネットやテレビから速報が押し寄せてきた時のメディアパニックの時の感触をそのまま再現しているかのようだ。

 物語性が弱く登場人物に感情移入できないという批判もあるが、おそらく本作は物語である前に、巨大生物上陸という現象を、膨大な情報の塊として処理しようとしているのだろう。そのスタンスはそのまま「巨災対」にも当てはまる。彼らはゴジラをあくまで生物だと捉えて、冷静に分析することで最良の結果を導き出そうとする。

 アニメや映画に限らず、日本人は物語の中で組織を描くことが苦手である。もっと言うと組織自体を嫌悪している。『エヴァ』はその最たる作品なのだが、その根底には第二次世界大戦時における軍国主義化に対する反省がある。戦後の日本は、国や組織にがんじがらめになるよりも自由にふるまえる個人の方が素晴らしいという戦後民主主義的な考え方で進んできたのだが、だからこそ組織を肯定的に描くことができなかった。

 そんな中、唯一描かれたのが理想の組織が、組織内のアウトロー集団だ。

 『シン・ゴジラ』に影響を与えたとされるアニメ『機動警察パトレイバー』やその影響下にある『踊る大捜査線』(フジテレビ系)や『相棒』(テレビ朝日系)といったポリティカルフィクションの要素が強い刑事ドラマにそれは顕著で、『シン・ゴジラ』も、その構造から、完全には逃れることはできていない。

 本作では、日本政府のふがいなさを散々描いた後、生き残った矢口を中心とした「巨災対」が対ゴジラ戦の指揮をとることになるのだが、逆に言うとゴジラが出てくるくらいのパニックがなければ、世代交代も組織の合理化も今の日本では難しいのかもしれない。だが、矢口を『相棒』の杉下右京のようなアウトローの天才にしないで、あくまで組織の調整役としたのは大きな一歩だといえる。本作では繰り返し書類のやりとりや、何かをする際に許可を貰う場面が登場するのだが、そういった煩わしい手続きを一つ一つクリアしていく姿がカッコよく見えるのが何より素晴らしい。

 国家規模の話だと大きすぎるが、根底にあるのは膨大な情報を処理して、複数の人間の利害を調整し、いかに合理的に回していくのかというシンプルな組織論だ。本作ではそれを政府の問題として描かれているが、民間企業で働いている人が見ても、本作が描いた“組織の美学”は共感できるのではないかと思う。

★成馬零一(なりまれいいち)
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。WEBマガジン「ich」(イッヒ)主催。主な著作に『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の評論家』(河出書房新社)がある。
https://twitter.com/nariyamada
https://note.mu/narima01

画像一覧

  • もしもゴジラが現実に現れたら、日本はどうなるのか。どう政府は対応するのか、という手続きの部分を徹底的に描く『シン・ゴジラ』。アニメや特撮には興味がない人が見ても面白い内容だ
  • 意思決定が遅い政府に対して災害対策本部は極めて合理的で、自分のやるべきことを一人一人が邁進していく。10~20代に『エヴァ』を見て育ってきたオタク世代にとっての“仕事における組織の美学”を感じとる瞬間である
  • 物語の中で組織を描くことが苦手な日本人。戦後民主主義的な考え方は、組織を肯定的にとらえることを阻んできた
  • 政務担当・内閣官房副長官の矢口蘭堂(長谷川博己)。組織人として政府の煩わしい事務手続きを一つ一つクリアしていく姿がカッコいい

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■30代で自己投資は必要?

先に紹介したアンケートの調査対象となったのが、30代以上の社会人で平均年収が974万円の人。彼らに「20代のお金の使い方で、自己投資と貯蓄とどちらがよいか?」と質問したところ、なんと85%が「将来のためにできるだけ自己投資するべき」と回答したのです。

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■30代から始める自己投資とは?

では、30代で行う自己投資とは一体どのようなものが良いのでしょうか。それは、20代で得た経験やスキルをもとに、多くの企業で生かせるスキルにブラッシュアップしていくということではないでしょうか。

確かに今働いている会社で必要とされるスキルをさらに伸ばす必要はあるでしょう。しかし、その会社がずっと存続していく保証はあるとは言えないかもしれませんし、特定の企業でしか使えないスキルを身につけても仕方ありません。

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教育訓練給付制度利用で、受講料の20%が戻ってくる
興味はあるけど、独学はちょっと厳しい・・・。でも、学校に通うのはお金がかかる!と思って悩んでいる人に、朗報です。会社で3年以上※初めて申請する方は1年以上 雇用保険に入っていれば、講座に払ったお金が戻ってくる「教育訓練給付制度」があります。

給付額は、受講者本人が教育訓練施設に対して支払った教育訓練経費の20%に相当する額。
ただし、支給額の上限は10万円とし、4千円を超えない場合は支給されません。つまり、経費が20万円であれば2割の4万円、60万円であれば2割の12万円ではなく上限の10万円ということです。

給付金の対象となるのは、原則として入学料及び受講料(最大1年分の合計になり、検定試験受験料、受講に当たって必ずしも必要とされない補助教材費などは対象となりませんので注意が必要)です。

資格取得できなくても、お金は戻る!
この制度のポイントは、万が一試験に合格が出来ず資格を取れなくても、きちんと勉強し講座を修了すればお金が戻ってくるということです。

講座が修了できたかどうかの判断については、学校がその講座の修了認定基準(出席率、課題の提出状況、修了認定試験等を一定割合以上満たすこと等、講座ごとに設定)に基づいて、受講した内容が身に付いたことを確認できた場合、修了と認められます。

修了日から1ヶ月以内の申請が必要
修了証をもらったらハローワークで給付金の申請を行います。ここで注意して頂きたいのは、教育訓練の受講修了日の翌日から起算して1ヶ月以内に支給申請手続きを行う必要があることです。意外とあっという間に期日が来てしまうので気を付けてくださいね。

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厚生労働省 教育訓練講座検索システム
http://www.kyufu.javada.or.jp/kensaku/T_M_kensaku

この春、資格を取得して、人生の花もさらに大きく咲かせてみてはいかがでしょうか?

報連相は上司が知りたいことを予測すること【大佐の『ぶっちぎり社員育成塾』第二回】【声優アニメ付き】

報連相、よく聞きますよね?報告・連絡・相談を合わせてホウレンソウ。

「ちゃんと報告してね」
「困るまえに相談しないとダメだよ」
言われたことがあるかと思います。

何故そう言われちゃうのか?上司がそういう人だってパターンも当然あります。が、言われたことだけ報告してるからってパターンが多い。

どういうことかと言うと、報告・連絡は、ルールがあってやってると思います。
ルーティーンになってる。でも、そういう仕組みがない業務とか、中小企業でルールがあまり整備されてない場合とか、そういう時は抜けることが多いんですね。抜けるというか、決まりが出来てない。

では、どうするか?上司の目線になって考えると良いです。上司は、報告すると決まってることを報告して欲しい訳じゃない。

「?」

ちょっと変ですか?でも、そうなんですよ。

上司は、報告すると決まってることを報告して欲しいけど、本質的に言うと、自分が求めてることを報告して欲しい訳です。だから、決まりだからって報連相する意識じゃなくて、上司が求めてるであろうことを報告する。

それが出来ると、上司はやりやすいです。評価が全てじゃないけど、上司からの評価が上がります。僕は若い時に、上司が知りたいであろうことを予測して先に報告してました。そうすると、他の報告しない人達とは評価は変わって来るんですね。他の人は、あまり上司と接したがらない。そうやってるうちは評価が上がらないんですね。

上司は忙しいから、部下の全てを見られない。その中で、相手が先読んで報告してくれると助かる訳です。もし、上司がそういうことを評価しない人だったとしましょう。そういう人もいるかも知れない。

でも、あなたが上司の立場になって、上司の思考を予想することを身に付けることは決してマイナスになりません。何かで役に立つ。小売店でも、営業でも、お客さんは人間です。その中の多くの人は、自分のことを理解して先読みした行動をしてくれる人を好みます。好まない相手には、やらなければ良い。

出来るか出来ないか?その違いは大きいんですね。

報連相は先読みでやりましょう。

■今回のナレーター

大谷 咲子(おおたに さきこ)

・主な活動歴
現在舞台を中心に声優、イベントコンパニオンなどの活動をしています。
ゲームが大好きです!
ツイッター  @sakiton69

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