地政学的リスクは短期で終了? 【岡安盛男の初心者でもわかる今週の為替市場】

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■7月第4週の見通し(2016/07/18)

為替アナリストの岡安盛男です。毎週月曜日にお届けしている『初心者でもわかる今週の為替市場』。今週も宜しくお願いします。

「地政学的リスクは短期で終了?」

先週は市場に漂う三つの不安が払しょくされ、リスク回避の動きが後退しドル円は大きく上昇に転じました。

一つ目は参院選で与党が圧勝したことです。過半数を獲得した安倍政権は大規模景気対策を打ち出すとの姿勢を示したことで株式市場が上昇。リスクオンの動きが高まり安全通貨の円も売られました。

また、バーナンキ元FRB議長が来日し、日銀の黒田総裁や安倍首相と会見。会見ではヘリコプターマネーを議論したのではといった憶測が広がりました。ヘリコプターマネーとは、ヘリコプターから市中にお金をばらまくように、政府と日銀がマネーサプライを大幅に増やす景気対策のことです。
市場は日本銀行が7月の政策決定会合でヘリコプターマネーに踏み切るとの見方からドル円は上昇しました。

ブレグジットで混乱する英国では次期首相指名が予想外に早く決まったことで、政治的な不安が後退。市場には安心感が広がりました。米国でも6月雇用統計が予想外の好調な結果となったことで労働市場への懸念が後退。連日NY株式市場は史上最高値を更新するなど、リスク選好の動きが続いています。

ドル円は一時106円30銭近くまで上昇。ユーロ円やポンド円、豪ドル円といったクロス円も全面高となりました。

しかし、金曜日の東京市場では三連休を控えポジション調整的な円の買い戻しの動き(ドル円は下落)が小幅ながら強まりました。

NY市場では再びドル円の買いが先行して始まりましたが、引けにかけ一気に円が上昇(ドル円は下落)しました。トルコで軍が国を掌握したとのショッキングな報道が流れた他、その前日には南仏でテロが起きたことや、中国の南シナ海情勢なども重なり地政学的リスクが一気に高まった為です。

安全通貨の円やドルが再び買われるなど、市場には不安感が広がり先週末は終わりました。

今週も週明け東京市場ではリスク回避によりドル円は上値の重い展開で始まるとみられます。しかし、地政学的リスクというのは長期化することはほとんどなく、短期で収束すると予想されます。

ブレグジット問題も一服感したかと思った矢先に今度はトルコのクーデター。次々と問題が起きて円安と円高が繰り返される目まぐるしい相場展開が続いています。損切りや利食いは早めに入れておくことがこのような相場では必要です。

申年は騒がしい年になると言いますが、本当に今年は何が起きるか分かりません。資金管理は徹底してください。

【岡安盛男の初心者でもわかる今週の為替市場】、来週も宜しくお願い致します。

▼30秒でわかる!7月第4週、今週の為替市場の見通し

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  • 地政学的リスクは短期で終了? 【岡安盛男の初心者でもわかる今週の為替市場】

執筆者

岡安 盛男 (おかやすもりお)

レグザム・フォレックスLLC (http://fx-okayasu.com/)代表、為替アナリスト                                                 外資系銀行に20年間在籍、1999年より為替デイトレーダーとして独立後は、 自身のトレードスタイルを確立、実践的な為替投資の啓蒙活動の他、FXスクール講師やFX会社向けの情報提供サービス、投資家向け情報レポートを展開(http://www.gladv.co.jp/members/fx_bible/)。ラジオ日経「岡安盛男のFXトレンド」、日経CNBCの「朝エクスプレス」など出演中。執筆多数。

岡安 盛男

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「米国雇用統計は一定の数値」

先週末に発表された米国6月雇用統計の結果は予想以上の雇用者増となりました。しかし、ドル円は100円を瞬間割り込むなど、上値の重い展開が続いています。

先週発表された米国非農業部門雇用者数は28万人増と、予想の17万人を大きく上回りました。前月は予想を大きく下回ったことで市場ではネガティブサプライズとなりましたが、今回はポジティブサプライズとなるなど、予想は一体どうなっているのかと言いたくなりますね。

この結果を受けドル円は一時101円30銭まで買われましたが、一転して99円99銭まで下落しました。それは、前月の分が1万1千人しか上方修正されなかったためでした。直近3か月平均が14.7万人と低下したことを嫌気したものです。また、失業率が4.9%と予想の4.8%を上回ったことも売り材料となりました。しかし、平均時給は前月から2.6%上昇するなど、全般に見ると雇用市場への不安は一先ず払しょくされたと考えられる内容です。

「米景気の底堅さと欧州不安との綱引き」

前月の雇用統計結果からFRBの年内利上げ観測が後退しましたが、これで再び利上げ期待が高まる可能性が出てきたと言えそうです。ただ、英国のEU離脱問題や欧州景気減速懸念、が燻ぶる中で、年内利上げはかなり難しい状況といえます。それは、ドルの上値が重いという事にもなります。

これだけの雇用統計の好結果を受けてもドル円が下落したという事は、そのような事情があったと考えられます。マーケットはどうしても100円を割らせたかったのでしょう。ブレグジットでドル円は東京市場で99円まで下落したことで、再度そのレベルを見に行こうとするのがマーケットの習性です。

しかし、今回も100円の壁は完全に崩れませんでした。100円を割り込むと日銀による介入警戒感が高まったのでしょう。結局100円ミドルに反発して引けてきました。
今週は複数のFRB幹部メンバーの講演などがあり、ブレグジット後の国内外の景気に対してどのような発言をするか注目が集まります。

ブレグジットによる欧州や英国の景気減速懸念に対して、米国の景気期待の高まりが市場のセンチメントを変えることが出来るか、綱引きが始まります。

今週は日本の参院選挙の結果も明らかになります。もし、自民公明与党が勝利すればアベノミクスへの期待が再び高まり日経株価も上昇するとみられます。そうなればリスクオン(リスク選好)による円安が進む可能性があります。100円は近くて遠い壁になりそうですね。

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「米国雇用統計に注目集まる」

先週はブレグジット(英国のEU離脱)による混乱の余波が世界的な金利低下をもたらすと同時に株価全体を押し上げました。
予想外のブレグジットにより今後英国だけではなく、欧州や米国経済にまで影響を及ぼす可能性が高まりました。

先週はBOE(英国中央銀行)のカーニー総裁が夏にかけて追加緩和の可能性を示唆したことでポンドは急落しました。ブレグジットによる今後英国経済への影響を憂慮したものと思われます。

また、ECB(欧州中央銀行)も債券購入ルール緩和を検討するとの一部の報道でユーロも売りが強まりました。その後ECBはこの報道を否定したものの、何らかの追加緩和措置を行う可能性が高いと市場は考えています。

この流れを継いで、日銀の追加緩和期待が高まりました。今回の混乱で米国FRBも年内利上げは難しいとの見方も広がるなど、世界的な金利低下傾向がみられました。

これを受け、米国長期債利回りは一時過去最低の1.37%台に低下。日本やドイツの長期金利も軒並み低下しました。また、同時に金価格もリスク回避の動きを意識され大きく買われるなど、リスク回避による安全資産への資金の逃避が目立ちました。

一方で、株式市場はこの金利低下を好感し大きく上昇。NYダウは1万8千ドル近くまで上昇するなど、こちらはリスク選好の動きになるなど株式と債券市場ではリスクへの見方に温度差が感じられます。ブレグジットショックは残るものの、寧ろ結果がはっきりしたことで市場の不透明感はある程度払しょくされたことも事実です。一方、世界経済にどう影響するかは不確定要素として今後も残ります。

市場全体を見ると、一先ずブレグジットによる混乱は落ち着き始めており、市場は次のテーマを探り始めようとしているように見えます。

今週は米国雇用統計が週末に発表されます。前月は雇用者数が予想を大きく下回ったことで米国の利上げ期待が一気に後退。ドル売りに反応しただけに、今回の結果に市場の注目が集まります。前月は悪天候やストライキといった特殊要因が多かったことから今回はその反動で予想を上回るのではといった見方もあります。

もし、予想を大きく上回るようならFRBの利上げ観測が再び浮上するかもしれません。今は悲観的な見方が先行しているだけに、この結果次第では市場のセンチメントが一転する可能性もあります。お金はいつまでも安全なところに居座ることはありません。いずれリターンの高い商品や金利を求めて動き始めることになります。今回の米雇用統計が、そのきっかけとなるか、皆さんも注目してみましょう。

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「大相場はリスクとチャンス」

先週は英国国民投票によりEUからの離脱が決定しました。市場は直前まで残留するとみていただけに、この結果はショッキングなものとなりました。ポンドは1.5ドルから1.32ドルまで下落し、ドル円も106円80銭から99円まで8円近く下落しました。東京市場でこれだけの動きがあるのは非常に珍しいことでした。元々東京市場はポンドやユーロの流動性(取引量)が低いことから、値動きが通常よりも過剰に動き過ぎたように思えます。この投票結果が欧米市場であれば、もう少し値幅は小さかったのかもしれません。

東京市場では円絡みの取引が多いことからポンド円やユーロ円なども激しく取引されたようです。結果的にポンド円は160円から133円まで下落。短時間で27円下落したのはリーマンショック以来かもしれません。歴史に残る動きといってもよいでしょう。この結果、為替市場だけではなく株式や債券、その他のすべての市場に激震が走りました。

英国がEUから離脱するという事は、英国だけではなくユーロや米国、そして日本にとっても今後不確定要素が高まることになります。特に、ユーロ各国では英国をモデルとして離脱する国が相次ぐ可能性が高まることになります。そうなるとユーロそのものの存亡危機に繋がりかねません。

また、世界経済や金融市場が不安定になれば米国の利上げ観測が後退しドル売の下落を引き起こす危険もあります、そうなれば、円高が進み日経株価を更に押し下げることにもなります。ただ、今の時点では余りに不確定要素が多く、次の展開を予想するのは極めて困難です。

マネーは最も臆病であり、そのような時は安全な資産に逃避しようとします。今回も同様で、安全な金や主要国の国債、そして円やドルなどに資金が一気に流れ込みました。しかし、マネーは臆病と同時に欲も大きく、市場が落ち着きを取り戻した時には再びリスクを求めて動き出すものです。それまでは亀の様に首を甲羅の中に引っ込めて成り行きを見守ることになるでしょう。

今週は先週の乱高下の後だけに、最初は様子を見てくる可能性もあります。しかし、これだけの激しい動きで市場はかなり傷ついていることから、損失を取り戻そうとする荒っぽい動きが続くと予想されます。相場が大きく動くときというのはリスクでもありますが、チャンスでもあります。滅多にないこの大相場で皆さんチャンスをものにしてください。

【岡安盛男の初心者でもわかる今週の為替市場】、来週も宜しくお願い致します。

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